私自身が就職活動をした2010年代前半って、「大企業VSベンチャー」の空気がめちゃくちゃ強かったんですよ。ちょうど「学生起業家」みたいなのがどんどん出てきてた時期でもあったし。大企業行ったって安泰じゃないよ、若いうちから裁量持って成長しようよ、みたいな。そういう空気があった。あったんです。
でね。そういう中で、いわゆる「ベンチャー」の採用担当者が言う口説き文句があった。それが、「大企業の中で、歯車として終わるような社会人でいいのか」っていう。大きな組織の中だったら君らなんか小さい存在で、それよりベンチャーで存在感持ってやってこうぜと。そういうロジックだったんですよね。おそらく。
そんな就活の空気感にまみれて、私がなーんにも考えていなかった就活生だったころ。当時仲のよかった大学の後輩がしてくれた話があったんです。真剣な顔で彼女は言ったんです。何言ってんだって、一蹴するような雰囲気で。
「社会をキチンとまわしている歯車がどれだけエライか知ってんのか」
それをね、山縣はとってもとってもカッコいいと思っちゃったんです。自分のためだの成長だの、それを追い求めることは悪いことでは決してないけれど、顔も知らない誰かの大切な今日を支えることや、次の世代へ科学や技術を託すためにいま頑張るような、そういう仕事もあるんだなぁと。
その彼女が新卒で入社したのが、三菱ケミカルだったんですけど。(あ、その彼女はとくに今回サイトには登場していません)
今回三菱ケミカルの方、30人ほど社員紹介を書かせてもらうにあたり、たくさんたくさんお話をさせてもらいました。当たり前なんですけど、三菱ケミカルに「歯車」の人はいません。そこにあるのは、そのとき、その場での役割とか、得意なこととか、やるべきこととか。
その人がいなくなったらバランスが狂ってしまうほど繊細で、でも、大きな組織みんなで地球ごと動かしてしまうようなことを目指していて、その一員として、着実に確実に、自分のやるべきことをやっている人たちだったと思います。
何にも知らない人は「歯車」と呼んだのかもしれないけれど。この地球を回しているのは、歯車じゃなく、一人ひとりの矜持だったり、使命だったり、夢だったりするんだなぁと、いまの私はすごく考えているんですよね。
そういう想いもあって、「みんなの夢が地球をまわす」って、すごくいいコンセプトだったんじゃないかしら、とか。思っています。ちなみにコンセプトを書いたのは私ではなく、三菱ケミカルの採用チームの方と、ブランディング会社のパラドックスです。
全体のコンセプトを書くのはライターじゃないことも結構多いんですが(書くこともあるよ)、ただ、そのコンセプトをどう解釈するかとか、どう捉えた上で取材中に何を聞くか、聞いたこととコンセプトの関係性をどのように考えるか、みたいなのはライターの仕事なんじゃないかしらと考えたりしています。取材で聞いたことをただ書くだけならGoogleドキュメントが音声を起こしてくれるやつでいいんすよ。
三菱ケミカルの方はみんな、つねに自分の立場を大切にしつつ、深く考える方ばかりで、取材の途中には何度も「考える」という単語が出てきました。「こう思うんですけど」じゃなくて、「こう考えるんですけど」。
考えて、考えて、考えて。好きなことがあって、得意なことがあって、だから、30人インタビューしても、多種多様な夢が聴けるんですよね。
電気の次のエネルギーを生み出したい人。自分の手掛けたスポーツ用品の素材がオリンピックの舞台で見られたらと願う人。割れないガラスや宇宙エレベーターを実現しようとする人。日本社会の働き方を、本気で変えたいと宣言する人。まるで花を愛でるように、自然エネルギーをゆっくり育てていこうとしている人。
よく言うじゃないですか。「人間の考えられることはすべて実現できる」という話。山縣は、アレ、本当なんじゃないかと思ってるんです。
って思うとですよ。三菱ケミカルはもちろん、技術力も高いだろうし、研究設備も整っているし、世界中に拠点があるとか、いろーんな企業としてのすごいポイントがあるけれど、やっぱり「ずっと考え続けている」のがこの企業のもっともすごいポイントなんじゃないかなぁとも思ったりします。たぶん、誰より考えているって人が、たくさんいる。
どうやったら環境負荷が減らせるか、KAITEKIって何なのか、何のために働き方は変えるのか。一人ひとりが自分の持ち場で、できる限り精一杯考えていて、その考える力があるからこそ、実現できることも多いのかなと。
そういったことを考えた次第です。山縣が三菱ケミカルを好きすぎる、という話になってしまいましたね。
そういえばここは制作実績紹介だったのですが、
・30人分のインタビュー原稿をひとりで書ける
・たんなる仕事紹介じゃなく、解釈が必要なストーリーも書ける
ということだけ伝われば十分です。あとはできれば読んでくれ。
https://www.m-chemical.co.jp/saiyo/
山縣は1ミリも携わっていないですが、切り絵風のデザインやイラスト、アニメーションも非常にかわいいですよ。以上。ぜひ見てね。
CL:Mitsubishi Chemical Corporation.
P/DIR/E/C/D/IL:PARADOX Inc.
Photo:Ryota Sakai
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